みんなで語る「ゆるし」の場

「ついカッとなる」理由を知る：自分を理解し、子供への許しに繋げる

感情的な対応をしてしまう、その後に訪れる後悔

子供の言動に対して、つい感情的に声を荒げてしまったり、強い口調で叱ってしまったりした経験は、多くの保護者の方にあるのではないでしょうか。後になって冷静になると、「どうしてあんな言い方をしてしまったのだろう」「子供を傷つけてしまったかもしれない」と、強い後悔や罪悪感に苛まれる。そんなご自身の感情と向き合うことは、とても辛いことかもしれません。

この「みんなで語る「ゆるし」の場」にも、日々の育児の中で感情的に子供に接してしまい、その後の許しの伝え方に悩んでいるという声が多く寄せられています。一人で抱え込まず、同じように悩む他の保護者の方々がいるということを知るだけでも、少し心が軽くなることがあるかもしれません。

今回は、なぜ私たちは子供に対して感情的になってしまうことがあるのか、その理由を少し掘り下げて理解し、それがどのように子供への許しや、自分自身への許しに繋がるのかについて考えていきたいと思います。

なぜ「ついカッとなる」のでしょうか

子供につい感情的に反応してしまう背景には、様々な要因が考えられます。例えば、

• 慢性的な疲労や睡眠不足: 体が疲れていると、心にも余裕がなくなり、些細なことにもイライラしやすくなります。
• 育児や仕事、家事によるストレス: 日々のプレッシャーが蓄積し、感情のコントロールが難しくなることがあります。
• 理想とする親像とのギャップ: 「いつも穏やかな親でいたい」という理想と現実の行動との間にギャップを感じ、自己肯定感が下がることが、感情的な反応に繋がる場合もあります。
• 過去の経験や価値観: ご自身が育ってきた環境や、親から受けた教育などが無意識のうちに影響していることもあります。
• 子供の特定の行動が「トリガー」になる: 子供の特定の言動（例えば、何度言っても聞かない、物を投げるなど）が、保護者自身の過去の嫌な記憶や苦手意識を刺激し、感情的な反応を引き起こすことがあります。

これらの要因は、決して保護者の方の愛情不足や人間性の問題ではありません。多くの保護者が直面する、日常の負担や心理的な背景が影響している場合がほとんどです。自分自身の感情的な反応を責めるのではなく、「今はこういう状況で心に余裕がないのかもしれない」「この行動は私のこういう部分に触れるから感情的になるんだな」と、客観的に理解しようと努めることが第一歩となります。

感情を理解することが、許しにどう繋がるか

ご自身の感情的な反応の背景を理解することは、子供への「ごめんね」を伝える上で非常に重要です。

1. より誠実な謝罪に繋がる: なぜ自分が感情的になってしまったのかを自分自身が理解していると、子供への謝罪の言葉に重みが生まれます。「ママ（パパ）は今日、少し疲れていて、〇〇ちゃんのやったことに必要以上に強く言いすぎてしまいました。ごめんなさい」のように、具体的に自分の状態や原因に触れることで、謝罪がより心からのものとして伝わりやすくなります。（ただし、子供に原因を押し付けるような表現にならないよう注意が必要です。）

2. 再発防止への意識が高まる: 感情的な反応のトリガーや背景が分かれば、「こういう時は深呼吸しよう」「休憩を取るようにしよう」といった具体的な対処法を考えることができます。これは、謝罪後の関係性を修復し、今後同じような状況を避けるための大切なステップです。子供に対しても、「今度カッとなりそうになったら、少し離れて落ち着くようにするね」のように、保護者自身の取り組みを伝えることで、子供も安心感を持ちやすくなります。

3. 自分自身を許すことにも繋がる: なぜ自分がそうなってしまうのかを理解すると、「私はダメな親だ」と一方的に責めるだけでなく、「こういう理由があったのだから、完璧でなくても仕方がない」と、自分自身に寄り添うことができるようになります。保護者自身が自分の至らなさを許すことができると、子供への謝罪もより自然で温かいものになるでしょう。

感情と向き合い、許しを伝えるためのヒント

• 感情的になったら、一度立ち止まる: 可能であれば、その場から少し離れたり、深呼吸をしたりして、冷静になる時間を取りましょう。
• 自分の感情を観察する: 「今、自分は怒っているな」「イライラしているな」と、感情に名前をつけて認識するだけでも違います。その感情の背景に何があるのか、少しだけ考えてみましょう。
• 子供に謝罪する: 感情的に対応してしまった後は、できるだけ早いタイミングで子供に謝罪を伝えましょう。子供の年齢に応じた、分かりやすい言葉を選ぶことが大切です。「強く言いすぎてごめんね」「怖い気持ちにさせてごめんね」など、具体的にどのような行動や言葉が悪かったのか、子供の気持ちに寄り添う言葉を添えると良いでしょう。
• 謝罪後の関わりを大切に: 謝罪しただけで終わりではありません。その後、子供が安心して過ごせるように、普段通りの優しい関わりを心がけましょう。抱きしめたり、一緒に遊んだりする時間を持つことも、心の繋がりを取り戻す手助けになります。
• 自分自身のケアを忘れずに: 疲労やストレスが感情的な反応の原因になっている場合、保護者自身の休息やリフレッシュも非常に重要です。自分を大切にすることが、結果として子供へのより良い関わりにつながります。

完璧な親なんていない

感情的に子供に接してしまい、後悔する経験は、多くの保護者が通る道です。大切なのは、そうした自分を責め続けず、なぜそうなってしまうのかを理解し、子供に誠実に許しを伝え、そして次にどう活かすかを考えることです。

完璧な親を目指す必要はありません。感情の波がある中で、子供との関係性を修復しようと努力する姿、正直に謝罪する姿を見せることは、子供にとって「人は間違えることがあるけれど、それを認め、関係性を修復することができる」という大切な学びにも繋がります。

この「みんなで語る「ゆるし」の場」は、そうした保護者の方々の悩みに寄り添い、経験を共有する場所です。どうぞ一人で抱え込まず、皆さんの声を聞かせてください。そして、様々な考え方やアプローチがあることを知り、ご自身と子供に合った「ゆるし」の形を見つけるヒントとしていただければ幸いです。